お母さんの目線が活きたおもちゃカフェdattochi(ダットッチ)
東京都八王子市。今回おじゃました親子カフェは『おもちゃカフェdattochi(ダットッチ)』さんです。
最寄駅は京王八王子駅かJR八王子駅で、お店の目の前には小学校があり、休み時間になると子どもたちの元気な声が聞こえてきます。
お母さんたちの居場所をつくりたい
お店の開業にあたっては、ご自身の中で3つの軸があったと園長の西室さんは語ります。
1つ目は、自身が母親となって子どもを連れて行ける場所や、ご飯を食べて気楽にゆったりできるところが少ないと感じていたこと、2つ目は嫁いだ先のご主人のご実家が呉服屋さんで、お義父さまがボランティアで小学生にお茶を教えており、それに同行した時に子どもたちの新鮮な反応を間近で見た経験から日本文化をライトに発信できればと思ったこと、3つ目は商店街での子育ては周囲の人の支えがたくさんあり、地域の人たちがこんなにもあたたかいのかと気付いたことだそうです。
そこから、「気軽にいけるお店を自分がプロデュースできないか」「呉服屋ではなく、違う場所から発信できないか」「地域とお母さんたちが繋がれる場所を作りたい」、という3つの思いが交差し、それを叶えられるカフェをつくりたいと始められました。
日々の子育てに追われておうちでもんもんとしているお母さんたちが、この場所で繋がり、リフレッシュした気持ちでまた子どもと接することができれば親子両者が悲しい思いをしないで済む、子どもと向き合う時間だけではなくて、お母さん自身が自分の時間を持てるようになってほしい、といった願いが込められています。
母の目線で見守るカフェ
お店にはチャイルドマインダーや看護師、幼稚園、保育園の先生といった資格を持つスタッフが在籍しています。
同じように母という立場となったスタッフだからこそ同じ母親の目線が分かるので、お客さまは「子どもがうるさくてごめんなさい」と気兼ねしてしまうのではなく、安心してくつろぐことができます。
例えば、メニューにあるお子さまうどんも、子どもの月齢に合わせてカットしてもらえたり、お食事の進み具合を見て提供する時間を工夫したりと、同じ母の目線に立っているからこそ分かる気配りが随所にされています。
みんなで作り上げた温もりカフェ
たくさんの地域の繋がりからこのお店が生まれました。
市の経営者講座で知り合った着物好きでもあるご友人が、母校である東京造形大学の教授を紹介してくださり、そこから学生のプロジェクトメンバーが集まって店舗のデザインが始まったそうです。また、まだ子の親ではない学生さんと、実際に子どもを持つお母さんたちとの座談会も開き、意見交換を行うなど、交流しながら進めていきました。
もともとは事務室といったようなガランとした物件だったそうですが、自分たちで天井にペンキを塗り、壁の絵も描き上げ仕上げていったそうです。
店内や家具、遊具のデザインは学生さんたちが行い、そして、実際の家具等の製作はすべり台ひとつとっても危なくないようにプロである地域のおじいちゃんの手で作り上げました。
その後、お店では学生さんがワークショップを行ったり、呉服屋さんの関係でご高齢のおじいちゃんやおばあちゃんとも触れ合ったりと繋がりが繋がりを呼んで、dattochiを通して多世代にわたる交流が生まれています。
日本文化とのコラボ
園長の西室さんは着物を着てお店に立つこともあります。
親子カフェの裏にはお茶室があり、抹茶教室や大和撫子講座と言われる所作のプチ講座などを開催されています。
また、フェスへ参加しそこでも抹茶の体験講座や芸者さんを呼んで踊りを鑑賞してもらったり、何かのきっかけで日本文化に興味を持ってもらえたらという思いから様々な活動を行っているそうです。
そもそも、『dattochi』って何語なの?
お店の名前を見たときに、おや?と首をかしげた人も多いのではないでしょうか。実はこの言葉は西室さんいわく『息子語』だそうで、ご長男が抱っこをおねだりするときに「だっこしてほしいよー」が言えなくて「だっとっちー」と発音していたのが『dattochi』の由来だそうです。 後日談ですが、お店がオープンした頃にはお兄ちゃんも大きくなり、ちゃんと「だっこして」が言えるようになっていたというエピソードも伺いました。
そんなご長男が好きな動物がぞうさんだったそうで、そこからお店のシンボルマークもぞうがモチーフになりました。動物園で40分もぞうだけをずーっと見ているくらい大好きだったので、「じゃあぞうにしよう」と思ったこと、そしてお店の名前が「ダットッチ」なので、母のぞうが子ぞうを抱きかかえているイメージにしたいと学生さんに伝え案を出してもらいました。
このマークはdattochiのシンボル『ひかりのなる木』ともリンクしています。
dattochiのシンボル『ひかりのなる木』
お店のシンボル制作にあたっては「こもれび」という言葉が西室さんの中にテーマとしてありました。
家に閉じこもってしまった母さんたちが外に出て光に当たることで、子育てに少し疲れてしまった気持ちを和らげてほしい、光に当たって和んでほしい、dattochiをそういう場所にしたい、などのキーワードを元に学生さんたちがこのシンボルをつくってくれたそうです。
ひかりのなる木は根元に入って遊ぶこともできます♪
お店にはこの思いが形になった絵本があります。
絵本を専攻している学生さんが描いたそうで、「うれしいことがあると光の実を1つつける」という ひかりのなる木が主人公のお話になっています。ご来店の際にはぜひ読んでみてくださいね♪
「おもちゃカフェdattochi(ダットッチ)@東京都・八王子(中編)」へ続きます。